遺言の改正|近年施行された自筆証書遺言と遺言書の保管に関する法改正について詳細に説明
終活・準備,葬儀後遺言に関しては、自筆証書遺言に関する法改正(平成31年1月13日施行)、法務局での遺言書保管に関する法の創設、さらに合わせて保管制度開始に伴う検認の省略(令和2年7月10日施行)が行われています。この記事では、近年施行された法改正を取り上げ今後遺言の作成を考えている人に向けて解説します。どのような法改正が行われたのか解説するので参考にしてください。
近年の遺言の改正に関する「改正相続法」とは
民法および家事事件手続法の一部は、40年ぶりの大改正が行われました。遺言に関しても、遺言の利用促進と相続に伴う紛争を防止することを目的として「改正相続法」が法改正されています。この改正に伴い様々な変化が起こっていますが、その1つが、遺言書の種類の1つである「自筆証書遺言」に関する改正です。
法改正によって、これまでと作成方法や保管時の取り扱いなどが変わったため、今後作成する場合には注意する必要があります。
「自筆証書遺言の方式緩和」(平成31年1月13日施行)
法改正によって起こった大きな変化が、自筆証書遺言の方式緩和です。これまでは、自筆証書遺言は自筆による作成のみ認められていました。しかし、法改正によって自筆証書遺言のうち、財産目録に関しては、通帳のコピーや代筆、パソコンでの作成など、自筆以外での作成も認められるようになりました。詳しくは後ほど解説します。
法務局で自筆証書遺言書を保管する制度の創設、合わせて保管制度開始に伴う検認の省略(令和2年7月10日施行)
自筆証書遺言書の保管に関する各種制度、ルールも変更になっています。これまでは、自筆証書遺言は、自宅で管理・保管するものでした。そのため発見されやすく偽造や改ざんのリスクがあったほか、逆に発見されないなどのリスクがありました。
この問題を解決するために、法務局で自筆証書遺言の原本および画像データ化した記録を保管する制度が創設されました。また、法務局が自筆証書遺言を保管することによって、従来は開封時に家庭裁判所で行う必要があった検認手続きを省略できるようにもなっています。なお、別種類の公正証書遺言は公証役場に保管されるので、これとは違います。
こちらも、詳しくは後ほど解説します。
遺言書の主な種類と特徴
遺言とは、自身の死後に遺産をどのように分割するのか、その意思を示すものです。遺言には、大きく分けて「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があり、主に自筆証書遺言か公正証書遺言が利用されることが多くなっています。そして、今回の法改正は、この中の自筆証書遺言に関連するものです。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は紙とペンで作成できる最もシンプルな遺言です。特別な手続きなどは必要なく、費用も時間もかけずに作成できるのが大きな特徴だと言えます。ただし、個人で作成できるため、内容の不備があると遺言としての効果がなくなってしまうリスクがあります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、2人の証人が立ち会って作成される遺言です。遺言は公証人が遺言者から内容を聴取した上で作成されます。また、作成された遺言書は、公証人役場で保管されるため、偽装や紛失の心配がありません。また、公証人が作成するため、内容の不備も生じにくくなっています。一方で、手続きに手間がかかる点には注意が必要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言書を2人の証人と一緒に公正役場に持ち込んで遺言の存在を保証してもらいます。遺言書を作成するのは遺言者本人であり、証人や公正役場の担当者に遺言の内容は知られません。あくまでも遺言書の存在を確実なものにすることが目的です。そのため、内容に不備があると、遺言内容が無効になる恐れがあります。
今後、自筆証書遺言書作成する際の変更点
ここでは、これから先自筆証書遺言書作成する際の変更点について解説します。なお、法改正施行日以前に作成されたものについては適用されないので注意してください。
財産目録について自筆以外でも作成が可能になった
法改正前は、自筆証書遺言は全て自筆による作成しなければいけませんでした。しかし、改正によって、財産目録の作成に関してはパソコンやコピーを活用して作成することが認められるようになりました。ただし、遺言書の本文に関しては、引き続き自筆でなければいけないため、作成時には注意してください。
自筆以外で作成出来ることのメリット
自筆以外で作成できるようになったことで、作成時の手間を省けるようになりました。また、作成しやすいため、不備も少なくなると考えられます。さらに、高齢者の場合、大量に自筆するのが難しいケースもありますが、財産目録の作成を専門家に依頼することも可能になったことで、負担が軽減されています。
パソコン作成やコピー、代理人対応で作成する際の注意点
パソコン作成やコピーの利用、代理人による作成ができるのはあくまでも財産目録についてのみです。また、自筆以外で作成された財産目録に関しては、各ページに遺言者本人の署名押印が必要になるので忘れないようにしてください。
今後、遺言書保管制度を利用する際の変更点
ここからは、これから先、遺言書保管制度を利用する際の変更点について解説します。なお、保管制度に関しても、施行日以前に作成されたものについては適用されないので、注意してください。
法務局で遺言書を保管、検認が不要になる
遺言書保管制度によりこれまで必要だった検認手続きが不要になります。法務局での遺言書保管制度は、今回の法改正によってできたものです。従来は自筆証書遺言を開封する際には、家庭裁判所での検認手続きが必要でしたが、今回の制度ができたことによって法務局で遺言書の内容が確認されるため、検認手続きを行う必要がなくなりました。
遺言書保管制度のメリット
ここでは、遺言書保管制度を利用するメリットについて解説します。
隠ぺいや改ざん、未発見などのリスクを回避出来る
遺言書を保管制度によって、遺言書の隠ぺいや改ざん、未発見などのリスクを回避することができます。これは、他の人に見つかる可能性のある自宅ではなく、法務局で遺言書を預かってもらえるためです。
遺言書の無効化を防ぐ
遺言書保管制度を利用するためには、法務局で遺言書の形式チェックを受ける必要があるため、内容の不備などによる遺言書の無効化を防ぐことができます。確実に遺言を実行してもらいたいときなどには非常に便利だと言えます。
検認の手続きが不要になる
これまでは、自筆証書遺言の開封には家庭裁判所での検認が必要でした。しかし、法務局で保管することで、検認手続きが不要となるため、検認にかかる手間や時間を省略することができます。それに伴い遺族の負担も軽減されるでしょう。
遺言書保管制度のデメリット・注意点
遺言書保管制度にはデメリットや注意点も存在します。どういったものなのか解説します。
法的な問題の有無のチェックは行われていない
法務局に遺言書を預ける際には、遺言書の形式が間違っていないかどうかの確認は行われますが、内容のチェックは行われません。そのため、後になって内容に法的な問題があると判明するケースもあるでしょう。ちなみに、公正証書遺言であれば、公証人から内容に対するアドバイスをもらうこともできますが、法務局では内容のアドバイスはありません。
遺言者本人が直接法務局に行く必要がある
遺言書保管制度を利用する場合、遺言者本人が法務局に行き手続きをする必要があります。代理人による手続きは認められておらず、厳格な本人確認が行われます。そのため、遺言者本人の体調が悪い、などの理由から本人が法務局に行けない場合は、制度の利用はできないため、注意が必要です。
法務局員に遺言書の中身を見せなければならない
遺言書保管制度は、検認が不要になるというメリットこそありますが、預ける際には法務局の担当者に内容を見られることになります。これまでの自筆証書遺言は誰にも内容を見られないというメリットがあったことを考えると、秘密性が薄れる点はデメリットと言えるでしょう。
遺言書を保管していることを、家族に伝えておく必要がある
遺言書を保管してもらう場合、その旨を家族に伝えておく必要があります。もし、遺言書の存在を伝えておかないと、遺族が遺言書の存在に気づくことなく、相続の手続きを始めてしまう恐れがあります。確実に遺言の内容を執行してもらうためにも、必ず伝えるようにしてください。
相続後、相続人等が保管されている遺言書閲覧等の申請を行うと他の相続人にも通知が届く
相続後、例えば、相続人の1人が遺言書の閲覧申請を行うと他の相続人にもその旨の通知が届きます。万が一遺言書の存在を知らない相続人がいると、相続をめぐってトラブルになる可能性があります。トラブルを避けるためにも、遺言書の存在を隠すようなことはしないほうがいいでしょう。
保管料や、各種手続きに費用がかかる
遺言書保管制度は、公正証書遺言に比べると安価で作成ができますが、完全に無料ではありません。遺言保管手数料として1通あたり3,900円がかかります。また、遺言書の閲覧や遺言情報証明書の交付請求などの各種手続きにも手数料がかかります。料金の詳細に関しては、法務省のホームページを確認してみてください。
遺言書保管制度を利用するための手続き
ここでは、遺言書保管制度を利用する際の具体的な手続きについて解説します。
必要要件に沿って、遺言者本人が自筆証書遺言書を作成する
まずは、保管する自筆証明遺言書を作成する必要があります。自筆証明遺言書は法務省令によって様式が定められているため、要件を確認した上で間違いのないように作成するようにしましょう。
具体的な要件には、遺言書の本文は全文自筆で作成する、正確な氏名や日付、押印が必要、自筆していない部分は全てのページに署名、押印が必要、などがあります。万が一要件に沿っていないと、無効化する可能性があるため、注意が必要です。
また、申請し保管された場合、原本やコピーは手元には戻らないので必要に応じコピーを取っておくようにしましょう。そして、保管時の封は不要です。ちなみに、保管後に閲覧請求をすることは可能です。
保管を依頼出来る法務局がどこか確認をする
遺言書を保管することのできる法務局には決まりがあります。具体的には、以下のいずれかの法務局で保管することになります。
・遺言者本人の住所地を管轄する法務局
・遺言者本人の本籍地を管轄する法務局
・遺言者本人が所有している不動産の所在地を管轄する法務局
法務局であればどこでもいい、というわけではありません。場合によっては遺言者が住んでいる場所から離れているケースもあるため、よく確認するようにしてください。
管轄する法務局に遺言者本人が行き、保管申請を行う
遺言書保管にあたっては、本人が法務局に行って保管申請を行わなければいけません。申請手続きを行う際には、事前に予約をするようにしましょう。予約なしで行くと、予約した人が優先されるため、最悪の場合後日改めてきて申請をする、といったことにもなりかねません。なお、手続きの際には、以下のものが必要になるので持参するようにしましょう。
・遺言書(封筒は不要)
・申請書(法務局の窓口でもらえる)
・本籍の記載のある住民票(3か月以内のもの)
・日本語による翻訳文(遺言書が外国語の場合)
・本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)
・収入印紙3,900円分
手続き完了後、法務局で保管される(引き換えに、保管証を受け取る)
申請手続が完了すると、遺言書は法務局で保管されます。なお、保管されると保管証が発行されます。保管証には保管番号が記載れており、遺言書を閲覧、検索する際などに活用できるため、なくさないように保管するようにしましょう。
なお、預けた遺言書に関しては、原本やコピーの返却はないため、事前にコピーをとっておくことをおすすめします。
遺言書保管制度を利用し、相続が発生した場合の手続き
ここでは、遺言書保管制度を利用して、実際に相続が発生した場合の手続きについて解説します。
相続人等は、遺言書情報証明書の交付を請求し、証明書受領後に各種手続きを行う
相続人は、遺言書情報証明書の請求が行え、請求すると遺言書情報証明書が交付されます。その後、遺言書情報証明書と相続が発生したことがわかる書類を用意することで、法務局や金融機関で各種名義変更手続きなど、相続に必要な各種手続きが可能になります。
なお、相続が発生した場合、相続人は、原本の閲覧請求と、画像情報等を用いた証明書の請求が出来るようになります。遺言書の有無や画像データの確認は全国どこの法務局でも行えます。ただし、原本の閲覧請求に関しては、遺言書が保管されている法務局でしか行えないので注意してください。なお、法務局に保管されている遺言書について検認は不要です。
また、1人が閲覧請求や画像データの確認申請を行うと全ての相続人に通知されるので、遺言書の存在を知らない人がいるとトラブルになる可能性があるので注意してください。
まとめ
法改正によって、自筆証書遺言の作成や保管方法が大きく変わりました、作成にあたっては財産目録をパソコンやコピーを使って作成できるようになるなど、遺言者本人の負担が軽減されています。また、遺言書保管制度によって遺言書が隠蔽や改ざんされることなく確実に保管されるようになったため、遺言者の意思がしっかりと尊重されるようになるでしょう。
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