公正証書遺言を作成するために必要な書類や作成手順を詳しく解説
終活・準備,葬儀後公正証書遺言は、自筆証書遺言や秘密証書遺言よりも、確実性の高い遺言です。しかし、公的な手続きに則って作成するため、必要な書類も多くなります。書類に不備があると、無効になる場合もあるので注意しましょう。この記事では、公正証書遺言に必要な書類や作成の手順、注意点などを詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。
公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人に遺言書を作成してもらう遺言のことです。公証役場にて制作するため、自分で遺言書を作成するよりも安全性と確実性があります。メリットも多くあるため、選択肢のひとつとして検討してもよいでしょう。作成するには、証人や必要書類が必要です。
遺言書には種類がある
遺言書には、自筆証書遺言と秘密証書遺言があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人が作成する遺言です。内容や年月日の記載、署名捺印など、遺言書の作成に必要なことをすべて自分で行います。在宅で手軽に作成でき、役場に支払う手数料なども必要ありません。今すぐ遺言書を作成したいときにおすすめです。
自筆証書遺言を行うには、自身の財産を証明する財産目録を作ります。財産目録はパソコンでの作成も可能ですが、すべての書類に署名捺印が必要です。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、自分で署名をすれば自筆で遺言書を作成する必要はありません。遺言書の内容を誰にも知らせずに作成できますが、本人の遺言書だと証明するために、公証人と2人以上の証人を用意する必要があります。
秘密証書遺言は、形式不備がおきやすく手間もかかります。自分だけで作成すると、遺言書として認められない可能性もあるので、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめです。
公正証書遺言を作成するメリット
公正証書遺言を作成するメリットを紹介します。自筆証書遺言と秘密証書遺言にはない利点をみていきましょう。
偽造のおそれがない
公正証書遺言は、国が指定した公証人が作成してくれるため、偽造の心配がありません。遺言者本人の願いや希望を、正確に遺言に残すことができます。国が認めた遺言書なので、安心して作成できるでしょう。
紛失のおそれがない
公正証書遺言は、公証役場で厳重に管理されるため、紛失の心配がありません。遺言者の死後、親族や相続人に内容を伝えるときも、原本ではなくコピーが公開されます。遺言者にもコピーが交付されるため、生前に遺言者が紛失した場合も、再発行が可能です。
有効な遺言が作成できる
正当な資格と専門知識をもった公証人がサポートするため、有効な遺言を作成できます。形式不備により、無効になる可能性はほとんどないでしょう。自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言者のミスや思い込みなどによって、無効になる可能性があります。
文字が書けない場合でも作成が可能
公証人が遺言書の制作を代行するため、目や手が不自由などの理由により自筆で遺言書がかけない場合でも、作成が可能です。手数料を支払えば、公証人に自宅まで出張してもらうこともできるのは心強いでしょう。
公正証書遺言のデメリット
公正証書遺言のデメリットを紹介します。マイナス点も理解しておくことが必要です。
手間がかかる
公正証書遺言は、2回以上公証役場に行き、打ち合わせを行う必要があります。遺言書の内容や作成日、手続き方法などを、事前に決めるためです。そのほか、証人を2人以上用意する必要もあるなど、手間がかかるのが特徴です。
費用がかかる
公証人の紹介料などの、公証役場が定めた手数料を支払う必要があります。費用は相続人の数や相続財産の価額によって変わるため、事前に確認しましょう。相続人の数や相続財産の価額が多い場合は、過大になるケースもあります。そのほか、印鑑登録証明書や住民票など、各種書類の発行手数料も必要です。
遺言内容を話す必要がある
公証人と2人の証人に、遺言書の内容を話す必要があります。他人に財産の内容を知られるため、遺言の確実性よりプライバシーを重視する方には向かないかもしれません。
公正証書遺言を作成するために必要な書類
公正証書遺言を作成するために必要な書類を紹介します。遺言書を作成する際の、参考にしてください。
遺言者本人の資料
公正証書遺言を作成する際は、以下のような遺言者本人に関する資料が必要です。また、遺言者本人に関する資料とは別に、実印も用意しましょう。
・遺言者自身の印鑑証明書
・遺言者と相続人に関する戸籍謄本
上記以外にも、相続の内容によって、必要な書類が異なります。たとえば相続人以外の人に財産を譲る場合は、譲受人の住民票が必要です。
遺産に関わる資料
相続する財産に関わる資料を用意しましょう。代表的なものは、以下の通りです。
・不動産:固定資産評価証明書もしくは固定資産税納税通知書、かつ登記簿謄本
・預貯金:預金残高証明書、通帳(複製)
・株式:証券会社からの報告書、残高情報
・車:車検証
・アクセサリー:財産の価値を証明するもの
・債務:契約書や請求書(複製)
・生命保険:保険証書や解約返戻金証明書(複製)
遺言書内で該当の財産について詳しく記載しない場合は、上記の資料が必要ないケースもあります。
証人・遺言執行者の資料
公正証書遺言を作成するには、身分のしっかりした証人が必要です。遺言書の信頼性を持たせるためにも、彼らの身分を証明できるものを用意しましょう。遺言執行者は、必ず設定するものでもありませんが、指定したほうがスムーズに遺言を実行できる可能性があります。指定する場合は、その人の身分を証明するものを用意しましょう。
公正証書遺言を作成するには
公正証書遺言は、以下の手順で作成するのがおすすめです。
・遺言書の原案を作成する
・公証役場とスケジュールを調整し、打ち合わせをする
・手続きに必要な書類を準備する
・遺言者、証人2名、公証人で公証役場に行くスケジュールを調整する
・遺言書の内容を精査し、遺言者、証人2名、公証人が署名・押印をする
・遺言者に公正証書遺言の原本が渡され、手数料を支払う
公正証書遺言は、作成するのに1か月弱かかる場合もあります。スケジュールに余裕を持たせて、丁寧に作成しましょう。
公正証書遺言を作成するときの注意点
公正証書遺言を作成する際は、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。具体的な注意点を紹介します。
遺留分に注意する
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に保証される、最小限度の相続財産のことです。兄弟姉妹以外の法定相続人であれば、法律上認められる権利なため、公正証書よりも優先されます。
遺言書の内容により法定相続人の遺留分を侵害した場合は、侵害分を請求する権利が、当事者の相続人に与えられます。後々トラブルになる可能性があるため、公正証書遺言を作成する際は、遺留分についても配慮しましょう。
無効になる場合もある
公正証書遺言は確実性の高い遺言書ですが、まれに無効になるケースもあります。以下の場合は、無効になる可能性が高いので注意しましょう。公正証書遺言は、要件に沿って、正しく作成してください。
・遺言者本人の意思決定能力が低く、遺言を残せる状態にない
・要件を満たしていない証人を採用している
・公証人の立会なし、もしくは正しく立ち合えていないのに遺言書を作成した
・遺言書を作成する際に、詐欺や恐喝があった
書き換えたいときは新たに遺言を作成する必要がある
公正証書遺言の内容を書き換えたいときは、該当部分の撤回を伝えたうえで、新しく遺言書を作成しましょう。公正証書遺言を書き換えるには、公証役場に保管されている原本を変更する必要があります。
変更部分は自筆証書遺言で書いてもよいですが、書き損じがあった場合に無効になるので注意が必要です。
公正証書遺言作成にかかる費用はどのくらい?
公正証書遺言の作成には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。具体的な料金を紹介します。
作成費用
相続財産の価額 | 公正証書遺言の作成費用 |
~100万円 | 5,000円 |
~200万円 | 7,000円 |
~500万円 | 11,000円 |
~1,000万円 | 17,000円 |
~5,000万円 | 29,000円 |
~1億円 | 43,000円 |
~3億円 | 43,000円+超過額5,000万円ごとに13,000円 |
~10億円 | 9万5,000円+超過額5,000万円ごとに11,000円 |
10億円~ | 24万9,000円+超過額5,000万円ごとに8,000円 |
公正証書遺言の作成費用は、相続財産の合計額すべてにかかるわけではありません。相続人や譲受人が相続する、財産の価額に応じて計算されます。証人を紹介してもらった場合は、証人に支払う日当も必要です。相続財産が合計で1億円以下の場合は、上記手数料に加え、11,000円が加算されます。
必要書類の手数料
印鑑証明書や戸籍謄本、住民票などを取得する際は、各種手数料がかかります。ただしそれぞれ1通あたり数百円程度なので、数千円ほど用意すれば、問題ないでしょう。
専門家に作成を依頼した場合は別途費用がかかる
公正証書遺言の作成を専門家に依頼した場合は、依頼料として、数万円~数十万円ほどの費用がかかります。弁護士や行政書士、司法書士に依頼する場合は、ある程度の予算を確保しましょう。
まとめ
公正証書遺言を作成するのに必要なのは、「遺言者本人の資料」「遺産に関わる資料」「証人・遺言執行者の資料」の3つです。具体的な書類は相続する財産によっても異なるので、公証役場などで事前に確認するようにしましょう。
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