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遺留分とは?対象となる相続人や計算方法など遺留分に関する基礎知識をわかりやすく解説

終活・準備,葬儀後



遺留分とは、相続人に保障された最低限の相続財産のことです。遺産を相続する場合、遺留分について理解しておく必要があります。この記事では、遺留分の概要から、誰が対象になるのか、どのように算出されるのか、など詳しく解説します。遺産相続のトラブルを避けるためにも参考にしてください。


相続の遺留分とは?

遺留分とは相続人に保障されている最低限の相続財産のことです。相続人は、被相続人の財産を相続する権利を有しますが、遺言によって第三者に遺産が全て贈られるケースもあります。そのような時でも、相続人が一定の遺産を取得できるのが遺留分です。そういった意味で遺留分は遺言よりも効力があるといえるでしょう。

【2018年の民法改正】遺留分請求において変更された内容

遺留分請求に関しては、2018年7月の民法改正によっていくつかの点が変更になりました。ここでは変更内容を解説します。

亡くなる10年以上前の贈与は対象外になった

改正により、生前贈与の期間が10年以内に限定されました。改正前は、過去10年以上前の生前贈与も遺留分計算できていました。しかし、際限なく過去の生前贈与に遡れてしまい、相続トラブルにつながる恐れもあり、年数が限定されています。なおこちらの変更は、2019年7月1日以降の相続で適用されます。

支払期限の猶予を求められるようになった

今回の改正では、遺留分の請求を行った際の支払い期限の猶予を求められるようになりました。たとえば、請求を行ったものの、贈与を受けた人が金銭をすぐ準備できない場合などに適用されます。この場合、贈与を受けた人が、支払期限の猶予を求めることになります。

遺留分の請求を現金で請求できるようになった

従来の遺留分請求は、現物の返還が行われていましたが、改正によって現金による請求ができるようになりました。現物の返還となると、財産をどのように分配するか協議が長期化するケースもあり、事業承継を行う際の支障にもなりかねません。この改正により、遺言者の意思を尊重したうえで財産の贈与、相続ができるようになりました。

遺留分を請求する「遺留分侵害額請求権」について

遺留分侵害額請求権とは、遺留分が侵害された時に、遺留分の請求ができる相続人の権利のことです。遺言は遺言者本人が亡くなると効力を発揮するため、たとえ相続人の遺留分を侵害していたとしても、遺言自体は無効になりません。しかし、遺留分侵害額請求権を行使することで、金銭の請求は可能です。なお、請求するかどうかは本人の自由となっています。

遺留分減殺請求との違い

遺留分減殺請求とは、2018年の民法改正前における遺留分の請求方法です。改正前は、現金の請求ではなく遺産そのものの請求が行われていました。しかし、民放の改正により、遺留分は現金で請求するものとなり、それに伴い「遺留分減殺請求」が「遺留分侵害額請求」に変更されています。

遺留分の対象となるのはどんな人

ここでは、遺留分の対象となるのはどのような人なのか、具体的に解説します。

遺留分の対象となる相続人

遺留分の対象となるのは、被相続人の配偶者、もしくは被相続人の直系卑属および直系尊属です。直系卑属とは、子どもや孫といった直接の子孫のことです。直系尊属は、親や祖父母といった直接の先祖が当てはまります。

遺留分の対象とならない相続人

被相続人の兄弟や姉妹、甥姪は、遺留分の対象とはならないため、請求できません。

遺留分請求の対象となるケース

ここでは、どのような時に遺留分請求ができるのか、具体的なケースについて解説します。

不公平な遺言があった場合

遺言により、不公平に権利が侵害された場合は、遺留分請求の対象となります。たとえば、遺言で第三者に財産を譲る遺贈が行われ、遺留分を侵害された場合などは請求可能です。

死因贈与が行われた場合

死因贈与とは、死亡が原因となって行われる贈与契約のことです。相続人の遺留分を侵害するくらいの死因贈与が行われていると、遺留分請求の対象となります。

遺留分を侵害することを知りながら生前贈与が行われた場合

生前贈与とは、被相続人が生きている間に財産を贈与する契約のことです。生前贈与によって遺留分を侵害することがわかっていながらも、生前贈与を行った場合、遺留分請求の対象となります。なお、基本的に生前贈与に対する遺留分請求は、相続開始1年前に行われたものが対象となります。

遺留分を請求できる割合

遺留分を請求する場合、被相続人との関係や対象となる人がどのくらいいるのかによって、請求できる割合が変わってきます。具体的には以下の通りです。


遺留分

相続人
配偶者子供父母
配偶者のみ1/2××
子供のみ×1/2
×
父母のみ×
×1/3
配偶者と子供
1/41/4×
配偶者と父母2/6
×1/6
配偶者と兄弟
1/2
××



遺留分の割合は2ステップで計算する

遺留分を求める場合、2ステップに分けて計算します。ここでは、具体的なステップを解説します。

【ステップ1】総体的遺留分

ステップ1では、総体的遺留分を求めます。総体的遺留分とは、遺留分権利者全員に対して割り当てられている財産のことです。総体的遺留分は、生前贈与された財産を含めた財産の総額から債務を控除した額となります。

【ステップ2】個別的遺留分

総体的遺留分が把握できたら、個別的遺留分を算出します。個別的遺留分は、総体的遺留分に、先ほど紹介した各相続人の相続割合をかけることで算出可能です。

遺留分の計算例

たとえば、財産が7000万円、債務1000万円、相続人として3人の子供がいる場合、遺留分の計算は以下のようになります。

7,000万-1,000万=6,000万(総体的遺留分)
6,000万× 1/2(子供のみの遺留分の割合)=3,000万
1,500万円× 1/3= 1,000万円

子供1人あたりの遺留分は1,000万円となります。

遺留分侵害額請求を行う3つの方法

ここでは、遺留分侵害額請求を行う3つの具体的な方法について解説します。

【1】相続人同士の話し合い

遺留分侵害額請求を行う場合、相続人同士での話し合いから始めるのが一般的です。電話やメールのほか、内容証明郵便で請求書を送ったうえで話し合うこともできます。合意が得られれば、合意書を作成し、内容に沿って支払いを受けます。

【2】家庭裁判所での調停

話し合いで解決できない場合、家庭裁判所で請求調停を申し立てます。裁判所は、相手の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立ててください。調停に入ると、調停委員が間に入り、話し合いを進めてくれ、合意が得られれば調停成立となり支払いを受けられます。

【3】裁判で訴訟

調停でも合意が得られなければ、訴訟を起こし、裁判で争うことになります。この場合、裁判所が遺産を評価したうえで、遺留分の計算を行い、支払い命令を下します。当事者間での合意は不要です。また、訴訟となると弁護士への依頼が必要となります。

遺留分の対象が複数ある場合の請求順序

死因贈与や生前贈与、遺贈が行われており、遺留分の対象が複数ある場合は、請求の順序が定められています。このような場合、まず遺贈を受けた受遺者に対して請求を行います。その後、死因贈与、生前贈与の順番に請求してください。なお生前贈与に関しては日付が新しいものから先に請求対象となります。

遺留分侵害額請求の「時効」について

ここでは、民法1048条で設けられている遺留分侵害額請求の2つの時効について解説します。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求は、1年で時効が消滅し、10年で除籍となります。時効は、相続が始まり遺留分を侵害していることを知ってから1年以内となっているため注意が必要です。また、相続開始および遺留分侵害の事実を知らなくても、相続開始から10年が経過していると除籍となり、遺留分請求ができなくなります。

時効を止める方法

時効は、請求により止めることもできます。請求は、相続開始・遺留分侵害について認識してから1年以内に行わなければなりません。請求方法にルールはありませんが、内容証明郵便を使用するのがおすすめです。これは、内容証明郵便であれば証拠が残せるため、相手がシラを切り時効が成立することを防げるためです。

遺留分を含む相続トラブルを防ぐには

ここでは、遺留分をはじめとした相続トラブルを防ぐためのポイントについて解説します。

遺言書は遺留分に配慮して作成する

遺産分割は、遺言書の内容にしたがって行われます。しかし遺言書によって、相続人以外の第三者が遺産を受け取る場合でも、相続人の相続をなくすことはできません。そのため、被相続人が遺言書を作成する際は、相続人の遺留分をふまえたうえで、侵害しない範囲を第三者に贈るようにしましょう。

計画的に相続対策を行う

相続を行う場合、遺言書で被相続人が相続する財産の内容を明確にしておくなど、計画的に準備する必要があります。これは、生前贈与や不動産売却による分配など、相続に伴うトラブルを防ぐためです。具体的には、財産を明確にし、誰がどの財産を相続するのか記載する、などの方法があります。

まとめ

遺留分によって、相続人は最低限の相続財産が保障されています。遺留分の請求には対象となる期限や割合などが細かく定められているため、まずは遺留分のルールを正確に把握しましょう。また、これから遺言書を作成する場合、遺留分への配慮を忘れずに作成することで、相続トラブルを回避できます。

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