遺産分割協議書とは?作成するメリットや手順、書き方のポイントをわかりやすく解説
終活・準備,葬儀後遺産分割協議書とは、遺産分割の協議の結果を記載した書面です。遺族同士のトラブルを避け、相続手続きをスムーズに進めるために役立ちます。この記事は、遺産分割協議書の作成が必要な人に向けて、遺産分割協議書について詳しく解説します。作成する手順や書き方のポイントも解説しているので、参考にしてください。
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書とは、遺産分割に関する協議の結果を書面に残したものです。必ず作成しなければならないわけではありませんが、協議の結果に同意した証拠として書面に残すことで、スムーズな相続や遺族間トラブルのリスクを回避できるというメリットがあります。作成は専門家に依頼するほか、自分自身で作成することも可能です。
遺産分割協議書が必要になる理由
口頭での約束はトラブルに発展する原因になりやすいため、書面化することは重要です。後から「納得いかない」「あの遺産は私がもらうべきだ」といった主張が出てくるケースも少なくないからです。書面があれば同意した証明となり、将来のリスクを減らせます。
また、遺産分割協議書は、相続の手続きをスムーズに進める際に役立ちます。不動産の相続登記や預貯金の名義変更で、提出が求められるケースもあります。
必要なケース・不要なケースがある
遺産分割協議書が必要になるのは、遺言書がなく法定相続割合で分割しないときです。遺産分割協議を行って、遺産分割協議書を作成しましょう。また、遺言書があるものの、押印や日付が抜けていて無効となる場合や、遺言書どおりに遺産分割をしない場合にも遺産分割協議書が必要です。
法定相続割合で遺産分割をするなら遺産分割協議書は不要です。
そもそも遺産分割とは
遺産分割とは、どの財産を誰が相続するかを相続人全員で話し合って、具体的に決めることです。遺言書がない場合、法定相続分に従って相続しますが、法律ではその内訳まで定められていません。
なお、遺産分割自体に期限はありませんが、相続税の申告期限があるため注意しましょう。
遺産分割を始めるタイミング
遺産分割は、相続開始から1か月以内に始めるのが理想です。相続税の申告期限は相続開始から10か月以内、相続放棄の申告期限は相続開始から3か月以内です。早い段階で協議をスタートさせることで、それぞれの期限内に手続きを完了できます。遺産分割協議書は、協議の結論が出たタイミングで作成しましょう。
遺産分割協議書を作成する手順
遺産分割協議書を完成するまでの流れは、4つのステップで行います。ここではその手順について解説します。
1.相続人を確定する
遺産相続が発生したら、被相続人の戸籍謄本を取得し、相続人調査を行いましょう。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があるため、隠し子や前妻の子どもの存在が後から発覚した場合、協議をやり直さなければなりません。正確な調査をもとに法定相続人を確定しておく必要があります。
2.財産を調べる
被相続人の保有していた財産を調べて洗い出します。現金、預金通帳、不動産、生命保険などを、自宅やスマートフォン、パソコンで確認します。住宅ローンやカードローンなどのマイナスの財産も対象になります。
後から発見した遺産はトラブルのもとになるため、協議前に全財産を確定しなければなりません。
3.分割協議を行う
洗い出した財産について、遺産分割協議を行いましょう。相続人全員に連絡し、誰がどれだけ相続するかを話し合います。協議は顔をあわせて行うほか、手紙・電話・メールを利用しても構いません。全員が納得する結論を出すことが重要です。
4.協議書の作成
全員が合意したら、協議の結果を書面にまとめます。できるだけ早い段階で作成し、誰がどの財産を相続するかを明確に記載しましょう。全員が署名・押印をして、遺産分割協議書が完成です。
遺産分割協議書に明記すべき項目と書き方のポイント
遺産分割協議書には、決まった様式がありません。手書きでもパソコンによる作成でも構いませんが、パソコンを使う場合はA4サイズで仕上げるのがおすすめです。記載する内容も決まっていませんが、明記すべき項目や書き方のポイントがあります。記載すべき項目は、以下のとおりです。
項 目 | 詳 細 |
タイトル | 遺産分割協議書と入れる |
被相続人の表示 | 亡くなった人の詳細を記載する |
本 文 | 誰の遺産を誰が相続人として分割したかを示す |
誰がどの財産を取得するか | 1人ずつ相続する財産の内訳を記載する |
後から発見した遺産の取り扱い | 誰が相続するか・再度協議するかを明記する |
人数分の書類を作成・保管 | 人数分作成し各自保管していることを記載する |
全員の署名・実印 | 合意した証拠として自筆の署名・実印を押す |
ここでは、明記する項目ごとに書くべき内容や、書き方について解説します。
タイトル
タイトルは「遺産分割協議書」とします。協議の結果を示す書類であることを、明確に記載します。パソコンの場合は中央揃えに設定し、本文よりも大きく目立つサイズにしましょう。
被相続人の表示
亡くなった方の情報を書きます。氏名、生年月日、死亡日、最後の住所、最後の本籍を記載します。住所は、住民票や戸籍を参考にして、都道府県から番地まで正確に記載しましょう。
本文
誰の財産を誰が相続人として分割したのかを示す文章を入れます。たとえば「上記被相続人の遺産について、共同相続人である鈴木イチコ、鈴木ジロウ、鈴木サブロウは、協議の結果、次のとおり遺産分割し、取得することを決定した」と記載します。
誰がどの財産を取得するか
本文の下に、各自が取得する財産について、1人ずつ内訳を記載します。誰がどの財産を取得するのかを明確にするため、財産の種類によって書き方に注意しましょう。
ここでは、それぞれの財産についての書き方を解説します。
現金・預貯金
現金は「現金〇万円」と記載します。預貯金は口座が特定できるように、「〇〇銀行 〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇」と口座番号まで記載しましょう。一般的に預貯金の残高は記載しません。
不動産
一軒家の場合は、登記事項証明書にあるとおりに記載します。土地の場合は「所在・地番・地目・地積」、建物の場合は「所在・家屋番号・種類・構造・床面積」を省略せずに書きましょう。マンションも登記事項証明書どおりに「一棟の建物の表示」「占有部分の建物の表示」「敷地権の表示」を記載します。共有持分の場合は、「所在・地番・地目・地積」に加えて「持分割合」を記載します。
株式などの有価証券
株式などの有価証券は、銘柄を特定できるように記載します。有価証券を証券会社に預けている場合は、証券会社からの通知などを参考に、「預けている証券会社名・発行会社名・株式数」などを正確に記載します。
代償分割
代償分割とは、1人が遺産を相続し、代わりにほかの相続人に現金などの代償金を支払う方法です。たとえば「鈴木イチコは、遺産取得の代償として、鈴木ジロウに対し、金500万円を令和3年3月30日までに支払う」と記載します。
後から発見した財産の取り扱い
調査をしていても、後から遺産を発見するケースも珍しくありません。前もってどのように扱うかを明確に決めておくことで、トラブルのリスクを減らせます。たとえば「後から発見した財産は、妻・鈴木イチコが相続する」「相続人全員が、後から発見した財産について再度協議を行うこととする」などと記載できます。
人数分の書類を作成・保管
相続人全員の部数を作成し、保管している旨を記載します。たとえば3人で相続する場合は、「本書を3部作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する」と示します。
全員の署名・実印
最後に日付、相続人全員の住所、氏名を記載します。パソコンの場合はスペースを設けて、印刷後に手書きの署名・実印を押印できるようにしましょう。署名・押印が必須と決まっているわけではありませんが、トラブル回避やスムーズな相続手続きのために、署名と押印をおすすめします。
遺産分割協議書が無効になってしまうこともある
署名・押印をしたあとでも、遺産分割協議が無効になり、協議をやり直すケースがあります。たとえば、相続人全員で協議しなかった場合、認知症や精神上の障害などにより判断能力が不十分な相続人が代理人を立てずに協議した場合、遺産分割の重要な事実に誤解があった場合などが当てはまります。
自身で作成することに不安を感じる人は、専門家に依頼する方法もあります。専門家への依頼は、目的によって依頼先が異なります。たとえば、不動産の名義変更は司法書士、相続税は税理士、代理人として遺産分割協議に参加してほしい場合は、弁護士に依頼しましょう。
完成した遺産分割協議書の提出先
完成した書類は、必要な手続きによって提出先が異なります。貯金の名義変更・払い戻しは金融機関、株式の名義変更は証券会社に提出しましょう。また相続税の申告は税務署、不動産の名義変更は法務局、自動車の名義変更は各都道府県の運輸支局に提出します。
公正証書にする方法もある
公正証書とは、法務局が管轄する公証役場で作成される書類です。遺産分割協議書も公正証書にすることができます。
公正証書とは
公正証書とは、判事・検事・法務事務官などを長く経験した公証人によって作成される公文書です。離婚する際の養育費の支払い、不倫の慰謝料、お金の貸し借りなど、お金を支払う契約時などで利用されます。
遺産分割協議書の公正証書化は必須ではありませんが、証明力が高まるため、将来のトラブルを避けられます。法律に詳しくない親族同士で遺産分割をした場合、財産が高額で協議後のリスク回避をしたい場合などに最適です。
公正証書にするメリット・デメリット
公正証書は公的な証明力を持つため、作成すると対外的な手続きがスムーズに行えます。公証人の専門的な立場からアドバイスを受けられて、相続人同士のトラブルが回避できるのもメリットです。原本は公証役場で20年間保管されるため、紛失の心配がありません。一方、デメリットとして、公正証書の作成に費用がかかることがあげられます。財産が大きいほど、手数料は高額になります。
公正証書にするための手順
公正証書化する手順は以下のとおりです。
1.必要書類を揃える
2.公証役場に予約をとり説明を受ける
書類は、被相続人の出生から死亡時までの戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明と戸籍謄本、財産に応じた必要書類を揃えましょう。
よくあるQ&A
遺産分割協議書を作成する際に、よくある質問と回答について紹介します。
作成する際は全員集まらないといけませんか?
協議の開催時に、全員がその場にいる必要はありません。遠方に住んでいる人や体調がすぐれず参加できない人もがいる場合でも、分割する結果に合意していれば問題ありません。署名や押印は、郵送で順番に回収する方法も認められます。
海外に住んでいる人はどう対応したらよいですか?
日本に住民票や印鑑証明がある人は、郵送で署名・押印を受け取りましょう。印鑑文化がない海外に居住している場合は、大使館や領事館などの担当官の前で署名(サイン)と拇印をし、確かに面前で対象者によってなされたことを示す証明書が必要です。直接公館に行かなければ申請できないため、早めに手続きを進めましょう。
まとめ
遺産分割協議書とは、誰がどの財産を相続するかを書面にまとめたものです。決まった様式はありませんが、過不足なく相続内容を明記し、署名・押印が必要です。自分で書類をつくる自信がない人は、プロに相談するのもおすすめです。
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