遺産分割とは?具体的に何をすればいい?|方法や手順、注意点をくわしく解説
終活・準備,葬儀後遺産を相続し、活用できるようにするには、遺産分割の手続きが必要です。しかし、どのように手続きを進めたらよいのかがわからないという方も多いのではないでしょうか。本記事では、遺産分割の対象や方法、具体的な手順から注意すべきポイントまで詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
遺産分割とは
まずは遺産分割と相続の違いや種類、いつまでに行う必要があるかなど、基本的なポイントを解説します。相続との違い
相続とは「被相続人から財産を受け継ぐこと」を指します。一方で遺産分割とは「相続財産のうち、何を誰がどれだけ受け継ぐかを決めること」です。相続時に遺言がない場合、遺産はすべての相続人の共有状態とみなされるため、各相続人が実際に遺産を所有財産とするためには、遺産分割の手続きが必要になります。遺産分割の手続きは2種類
遺産分割には「指定分割」と「協議分割」の2つがあります。指定分割では、遺言書に則って遺産の分割を行います。法定相続分にとらわれずに被相続人の希望を反映できる半面、遺言書の内容が不公平である場合には、トラブルになる懸念があります。一方で協議分割とは、遺言書がなかったり、内容が不十分だったりする場合に、相続人同士の協議によって遺産の分割を行うことです。相続人の納得感は得られやすいものの、合意までに時間がかかりがちです。
遺産分割の期限
遺産分割の手続きに法的な期限はありません。ただし、遺産分割を行わずに、遺産を相続人全員で共有している場合、不動産の扱いなどを巡ってトラブルに発展する可能性があるため、早めに手続きを行うことが望ましいでしょう。相続税の申告期限である「相続発生から10カ月以内」をめどに、遺産分割を行うことをおすすめします。遺産分割が不要なケース
遺産分割は必須ではありません。以下のケースでは不要です。・遺言書にすべての遺産の処分方法が示されている(※法的に有効な遺言書であることが前提)
・相続人が1人しかいない、もしくは相続人がいない
・相続の対象となる財産がない
遺産分割の対象者と割合
遺産分割の際、「誰がどのくらい遺産を相続するか」の目安になるのが法定相続分です。民法では、以下のように相続人の優先順位と割合が定められています。相続の順位 | 相続人と分割の割合 |
第1順位 | 配偶者:50% 子ども:50%(人数に応じて按分) |
第2順位 | 配偶者:75% 父母(もしくは祖父母):25% |
第3順位 | 配偶者:75% 兄弟姉妹:25%(人数に応じて按分) |
ただし、法定相続分の割合は目安であり、相続人全員の同意があれば、違う割合で分割することも可能です。
遺産分割の対象となる財産
遺産分割の対象となる財産の具体例は、以下のとおりです。なお、借金や負債は遺産分割の対象にならず、法定相続分に則って相続されるため、注意しましょう。遺産分割の対象となる財産例 | 不動産/不動産賃借権/現金/預貯金/有価証券/宝飾品/美術品/車・船舶/ゴルフ会員権 など |
遺産分割の対象とならない財産例 | 金銭債務/生命保険金/死亡退職金/国家資格 など |
遺産分割をしないとどんなデメリットがあるか
遺産分割の手続きをしないと、遺産は相続人全員の共有となり、自由に使えません。納税猶予制度など、相続税の特例制度も適用されず、遺産を使えない状態で相続税を支払わなければなりません。また、遺産分割をしないうちに次の相続が発生すると、相続人が増えて、新たなトラブルを生じる可能性もあります。遺産分割の方法
ここでは、具体的な遺産分割の方法4つを解説します。1.現物分割
現物分割とは、「妻には家、長男には預貯金」といった具合に、遺産を現物のまま分割する方法です。最もわかりやすくシンプルな分割方法である一方、法定相続分どおり正確に分割することが難しいのがデメリットです。2.換価分割
換価分割とは、遺産を売却し、お金で分割する方法で、不動産などに適しています。法定相続分どおりに分配できることに加え、相続税の節税につながる点がメリットです。ただし、遺産の処分には一定の手間や経費がかかるほか、譲渡所得税が発生する可能性もあります。3.代償分割
代償分割とは、法定相続分を超えて遺産を相続する代償として、他の相続人に金銭を支払う方法で、不動産などを売却したくない場合に適しています。たとえば「不動産を長男が相続する代わりに次男に○万円支払う」といった具合です。ただし、代償金の支払い能力がないと利用できません。4.共有分割
共有分割とは、不動産などの遺産を複数の相続人で共有する方法です。相続人の間で意見が割れている場合などは、協議を成立させやすいでしょう。ただし、遺産の売却には共有者全員の同意が必須となるほか、相続人が亡くなると新たな相続人が増えて、権利関係が複雑化しがちです。遺産分割の手順
ここでは、遺産分割の手順について具体的に解説します。1.遺言書の存在を確認する
最初に、被相続人が遺言書を残しているかを確認します。ただし遺言書が見つかった場合も、その内容に不備などがあれば、無効になる可能性があります。あとからトラブルにならないように、事前に遺言書の有効性も確認しておきましょう。※関連記事:遺言書を無効にしたいときはどうする?納得できないときの対処法をわかりやすく解説
2.相続財産を確認する
次に、相続財産調査を行い、遺産の全容を把握します。被相続人の自宅だけでなく、不動産の登記簿謄本や預金の可能性がある銀行など、慎重に調査しましょう。遺産分割の手続きが進んでから、遺産の内容に抜け漏れが判明した場合、協議がやり直しとなる可能性があります。3.相続人を確認する
相続人の範囲も確認が必要です。遺産分割協議は、相続人全員の参加が必須とされており、不参加の相続人がいると無効になります。場合によっては、被相続人の謄本類を集めて、前妻との間の子どもや、他に認知されている子どもの有無なども調べる必要があります。4.遺産分割協議を行う
相続財産・相続人の確認がとれたら、相続人が遺産の分配について話し合う、遺産分割協議を行います。電話・メール・書面など、非対面のやりとりでも問題ありません。大切なのは、相続人全員の合意です。1人でも反対する相続人がいれば、その遺産分割協議は無効となります。5.遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議で合意した内容は、遺産分割協議書にまとめます。預金の名義変更や、不動産の登記などの際には、この遺産分割協議書が必要です。また、遺産分割協議の内容について、後から相続人の間で意見の相違が出てきた時のためにも、作成しておくことをおすすめします。6.遺産分割調停
遺産分割調停とは、相続人の間に調停委員会が介入し、各相続人からのヒアリングや、解決のための助言を行うなどして話し合いを進める手続きです。遺産分割協議での合意形成が難しい場合、家裁に申し立てをして遺産分割調停を行います。遺産分割協議と同様に、相続人全員の参加が必要です。7.遺産分割審判
遺産分割調停が成立しなかった場合は、遺産分割審判に移行します。審判では、各相続人の主張や資料をもとに、裁判官の裁量によって判断が下されます。結果的に、相続人の希望が反映されないことも多いため、当事者間の話し合いで解決することが望ましいでしょう。遺産分割協議書に記載すべき内容
遺産分割協議書の内容に抜け漏れがあると、効力を失うケースもあるため、作成時には注意が必要です。具体的な記載項目は以下のとおりです。・被相続人の名前
・相続開始日
・被相続人の本籍地
・相続人全員の名前・住所(本人の署名)
・各相続人の相続財産
・相続人全員の実印
なお、財産について記載する際には、不動産は登記簿どおりの表記が必要です。また、預金は支店名・口座番号まで明記しましょう。
遺産分割協議書が効力を失うケース
遺産分割協議書が効力を失う主なケースについて解説します。・遺産分割協議に相続人の一部が参加していない
・相続人全員の同意により、遺産分割協議をやり直す
・遺産分割協議の対象となる遺産に漏れがあった
・遺産分割協議の後で、新たな相続人の存在が明らかになった
遺産分割でトラブルを防ぐための注意点
相続人同士のトラブルを回避するため、事前に確認すべき点について解説します。被相続人の子どもに半血兄弟姉妹がいないか
被相続人の子どもに、片方の親が同じ「半血」の兄弟姉妹がいる場合は注意しましょう。半血の兄弟姉妹も法定相続人になり、その相続割合は全血と変わりません。面識や交流がなくても、相続手続きのためには連絡を取る必要があります。生前贈与などを受けている相続人がいないか
遺産分割協議での合意形成が難しい場合、家裁に申し立てをして遺産分割調停を行います。特別受益を受けている相続人がいる場合は、遺産分割の計算方法は以下のように変わる可能性があります。・特別受益なしの相続人
(相続財産+特別受益額)×法定相続分
・特別受益ありの相続人
(相続財産+特別受益額)×法定相続分-特別受益額
同居していた相続人がいないか
被相続人と同居していた相続人がいると、介護・家業手伝いなどの寄与分を主張してトラブルになるケースがあります。寄与分とは、相続財産の増加・維持に貢献した相続人に認められる相続分の増加です。寄与分の客観的な評価は難しいため、事前に遺言書に明記しておくことが望ましいでしょう。海外在住の相続人がいないか
海外在住の相続人は、連絡がとりにくかったり、調停に行けなかったりと、遺産分割の合意形成が難しくなりがちです。また、印鑑証明や住民票など、手続きに必要な書類も国内在住の場合と異なります。必要に応じて、国内の弁護士を代理人として立てるなどの対応をとってもらいましょう。未成年の相続人がいないか
未成年の相続人がいる場合も注意が必要です。未成年は遺産分割協議に参加できないため、父母などの親権者が法定代理人として参加します。ただし、父母も相続人に含まれる場合は、利害が対立するため、代理人になれません。この場合は、家裁に特別代理人の選任を請求する必要があります。相続人の判断力に問題がないか
相続人が重度の認知症の場合など、判断能力が欠如しているとみなされる場合は、遺産分割協議ができません。協議を進めるための選択肢として、成年後見人の選任の請求が可能ですが、成年後見人は専門家が選ばれることも多く、その際は一生涯報酬が発生します。不動産の相続が多くないか
不動産のような不可分な財産は公平に分けるのが難しいため、遺産の中で不動産の割合が多い場合は注意が必要です。誰が不動産を相続するのか、代償分割とする場合は、代償金の支払いや金額設定をどのようにするのかといった点で揉めることも少なくありません。ただし、安易に共有分割を選ぶのは、後々トラブルにつながりやすいため、避けましょう。こんな時はどうする?遺産分割Q&A
遺産分割に関するよくある疑問を解説します。遺言の内容に不満があり、指定分割したくない
遺言は法的効力が強く、法定相続分より優先されますが、遺言通りに相続しなければならないわけではありません。遺言があっても遺産分割協議を行うことは可能であり、相続人全員の合意があれば、遺言と異なる内容で遺産分割を行えます。借金を相続したくない
借金などの債務は遺産分割の対象ではないため、遺産分割協議で「債務を相続しない」という取り決めを行っても、債権者にその主張は通りません。借金を相続したくない場合は、相続放棄を行います。もしくは免責的債務引受契約という形で、他の相続人が債務を支払うことを債権者も含めた契約で交わす方法もあります。連絡先不明な相続人がいる
遺産分割協議には、相続人全員の参加が必須です。連絡先がわからない場合は、被相続人の戸籍から最新の戸籍を突きとめ、本籍地で戸籍の附票を取得します。連絡をしても反応がない場合は、調停で裁判所から強制的に呼び出してもらうことになります。相続税の申告期日までに遺産分割が終わらない
相続税は相続発生から10カ月以内に申告しないと、無申告加算税の対象となります。また、未分割の財産は配偶者控除などの特例が適用されないため、申告前に遺産分割を終わらせることをおすすめします。期日までに遺産分割が終わらない場合でも、未分割の状態で申告して、後から修正しましょう。遺産分割前にお金が必要になった
葬儀代や生活費など、遺産分割前にまとまったお金が必要な場合には、預貯金払戻し制度を利用できます。預貯金払戻し制度とは、必要書類を提出すれば、相続預金から、1つの金融機関につき150万円を上限に、払戻しができる制度です。その分の預金は、払戻しを受けた相続人が取得するものとして、遺産分割協議の中で調整します。遺産分割前に遺産が処分されてしまった
遺産を複数の相続人で共有している場合、相続人が遺産分割前にその共有持分を処分することは違法ではありません。ただし、公平性を担保するため、「勝手に処分した相続人以外の全相続人の同意があれば、処分された財産も遺産分割の対象に含めることができる」と民法で定められています(民法906条の2)。まとめ
遺産分割は、相続人全員の合意が必要なことから、スムーズに進まないケースもあります。遺産分割の対象範囲や注意点を正しく理解し、ひとつひとつのステップを着実に行うことが大切です。アイワセレモニーは、葬儀内容や費用について事前に無料で相談・見積もりを行っています。葬儀後の法事や相続についてのサポートも行っているため、初めて葬儀を行う場合にも安心してご利用いただけます。24時間年中無休で相談を受け付けていますので、お困りのことがあれば、ぜひ一度ご相談ください。
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